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2026.01.20

専門家レポート【腹腔鏡】ますます需要高まる内視鏡領域

私たち小滝橋動物病院グループでは、一般診療に加えて各専門科のチームが連携し、より高度な獣医療の提供に努めています。近年は、他院からのご紹介やセカンドオピニオンとしてのご来院も増えており、現場で得た知見や経験は、貴重な学びの機会となっています。これらを広く還元するべく、私たちは定期的に獣医療従事者の皆さまに向けた情報発信を行っております。

 

小滝橋動物病院グループ Case Report
News Letter vol.7

特集:
術後のQOLを向上させる低侵襲な腹腔鏡手術


 

症例紹介
腹腔鏡下卵巣子宮摘出術

■はじめに

腹腔鏡下卵巣子宮摘出術は約1cmの切開創を2または3カ所あけ、腹腔鏡によるモニター画像を見ながら卵巣および子宮を摘出する術式です。最も大きなメリットは術創が小さいことによる疼痛軽減です。
特に大型犬は小範囲の術創で実施でき、疼痛軽減の効果が高いと考えられます。また、柴犬など痛みに対する反応が強い犬種や、術後の気道閉塞のリスクが高い短頭種犬などに対しても、疼痛軽減のメリットが大きいと考えられます。小型犬や猫に対しても、2孔式の術式により小範囲の切開創で実施できます。その他の利点として、 ①卵巣堤索牽引時の疼痛軽減 ②腹腔内臓器全体の観察③確実な止血確認④拡大視野による手術で卵巣遺残予防可能などが挙げられます。
また、当院の場合は開腹手術と比較して入院日数が短く、症例の状態が良好であれば手術当日に退院することも可能です。

■症例1

 

犬種 ラブラドール・レトリーバー


性別 


年齢 1歳


体重 20kg


 

■来院理由

大型犬のため避妊手術時の術創範囲と入院に不安があり、腹腔鏡視下での卵巣子宮摘出術を希望され、かかりつけ医院より紹介来院されました。


 

■手術

臍直下に小切開を加えて5mmトロッカーを挿入し、硬性鏡用ポートを作成しました。炭酸ガスで気腹し、鏡視下で頭側と尾側に5mmトロッカーを挿入し、鉗子用およびエネルギーデバイス用ポートを作成しました。
鏡視下で卵巣および子宮を持ち上げ、エネルギーデバイスで卵巣動静脈・卵巣堤索・子宮広間膜を凝固切開しました(図1)。
尾側の切開創を通して左右卵巣および子宮を体外に引き出し、子宮頸部で結紮切離しました。


 

エネルギーデバイスを用いて卵巣動静脈を凝固切離しているところ

 

■術後経過

手術当日夕刻に自力歩行し退院しました。飼い主様とのご面会時には、尾を振って元気そうな姿が見られました。


 

術創の様子:大型犬は開腹手術との切開範囲の差が大きい

 
 

■症例2

 

猫種 チンチラ・ペルシャ


性別 


年齢 6ヶ月


体重 1.9kg


 

■来院理由

体重があまり増えないことと、臆病な性格であることから手術による痛みと入院に対して不安があり、腹腔鏡手術を希望され来院されました。


 

■手術

臍直下に小切開を加えて5mmトロッカーを挿入し、硬性鏡用ポートを作成しました。炭酸ガスで気腹し、鏡視下で尾側に5mmトロッカーを挿入し、エネルギーデバイス用ポートを作成しました。
鏡視下で卵巣と子宮の間を体外から刺入した縫合針で吊り上げ(図2)、エネルギーデバイスで卵巣動静脈・卵巣堤索・子宮広間膜を凝固切開しました。
尾側の切開創を通して左右卵巣および子宮を体外に引き出し、子宮頸部で結紮切離しました。


 

図2:卵巣および子宮を針を用いて吊り上げている様子

 

■術後経過

手術当日に退院し、手術翌日は元気食欲ともに問題ありませんでした。飼い主様宅で過ごすことができ、飼い主様も安心することができたと喜ばれていました。


 

術創の様子:2孔式ならば小型犬や猫でも小範囲の切開で実施可能



症例紹介
腹腔鏡補助下膀胱結石摘出術

■はじめに

膀胱結石はしばしば膀胱炎や尿道閉塞の原因となり、血尿や頻尿、排尿障害を引き起こします。腹腔鏡を用いて膀胱結石を摘出する場合、切開創の皮膚に結紮固定した膀胱内に硬性鏡を挿入し、膀胱内をモニターで観察しながら行います。全ての操作を腹腔内で行うわけではないので、腹腔鏡補助下手術と呼ばれています。
膀胱の小切開部位から硬性鏡や鉗子を挿入して行う術式のため、小型多数の膀胱結石の摘出に向いています。小型多数の膀胱結石は肉眼で観察しづらく、しばしば尿道内に入り込みます。細かな結石や近位尿道内も拡大して観察可能ですので、結石の取り残しを極力減らすことができるという長所があります。

■症例

 

猫種 スコティッシュ・フォールド


性別 去勢雄


年齢 3歳


体重 4.0kg


 

■臨床経過

頻回尿と血尿の症状があり来院。過去には結石による尿道閉塞の既往歴もありました。
X線検査、腹部超音波検査にて、膀胱内および尿道内に0.3-0.5mm大の結石を多数認めました(図1,2)。
尿中のpHは6.5で、尿沈渣中の感染および結晶は認めませんでした。


図1:腹部RL レントゲン画像
青矢印→膀胱内結石
赤矢印→尿道内結石

 

図2:膀胱超音波検査画像
青矢印→シャドーを認める膀胱内結石

 

■手術

尿道カテーテルから生理食塩水を送水することで尿道内の結石を膀胱に戻します。臍直下に小切開を加えて5mmトロッカーを挿入し、硬性鏡用ポートを作成しました。炭酸ガスで気腹し、鏡視下で尾側に5mmトロッカーを挿入し、鉗子用ポートを作成しました。鏡視下で鉗子を用いて膀胱を吊り上げ、トロッカーを抜去し、皮膚と膀胱漿膜を結紮固定しました。尿道カテーテルから生理食塩水を送水し膀胱を膨らませ、固定した膀胱にメスで小切開を加えました。

生理食塩水を還流させながら膀胱内に硬性鏡を挿入し、鏡視下で膀胱結石を摘出しました(図3,4)。
近位尿道内の結石を確認し、結石の取り残しがないことを確認後、開腹しました(図5,6)。
結石鑑定の結果は、98%のシュウ酸カルシウム結石でした。


図3:膀胱内の結石

図4:膀胱内結石を鉗子にて摘出

図5:膀胱頸

図6:近位尿道内

 

■術後経過

手術翌日にはご飯を食べてくれて、元気な様子を見せてくれました。手術翌日は頻尿を認めましたが、血尿は認めませんでした。頻尿も術後順調に回復しました。

 

術創の様子



症例紹介
腹腔鏡下胆囊摘出術

■はじめに

世界で初めて行われた腹腔鏡手術は、1980年代にそれまで診断を目的に使われていた腹腔鏡を治療に応用した胆嚢摘出だったといわれるほど、腹腔鏡下胆嚢摘出術は代表的な内視鏡外科手術です。
しかし、獣医療領域では腹腔鏡下胆嚢摘出術が実施されている施設は多くありません。動物の肝臓と肥嚢の付着部分の構造は複雑であることから、合併症や開腹移行率は30%といわれています。現在の当院での腹腔鏡下胆嚢摘出は全て腹腔鏡下で実施できております。総胆管洗浄は一般的な動物病院の設備や技術では困難とされています。また、肥囊破裂を起こした重症例では手術の速度が求められる場面も多いため、一般的には予防的胆嚢摘出が行われています。予防的な胆嚢摘出を行う適切な時期については、まだはっきりと定まっていません。胆嚢粘液嚢腫が認められる場合や、胆泥症や胆嚢炎によって、元気および食欲の低下などの症状が認められる場合に実施されることが多いようです。
今後の獣医療の発展によって手術手技や精度が高まり、腹腔鏡下胆嚢摘出が広く普及していくことが期待されます。

■症例

 

犬種 トイ・プードル


性別 去勢雄


年齢 9歳5ヶ月


体重 4.0kg


 

■検査所見

腹部超音波検査にて胆嚢腫大と、肥囊内に流動性の乏しい貯留物が認められました。肥囊壁に沿って低エコー構造物も認められ(図1)、ムチンを含む粘液腫が貯留した胆嚢粘液嚢腫が疑われました。黄疸は認められず、血液生化学検査においても肝酵素の上昇は軽度でした。

将来的な総胆管閉塞や肥囊破裂の予防のために腹腔鏡下での胆嚢摘出の実施を飼い主様に提案したところ、腹腔鏡下肥嚢摘出を希望されました。

 

図1:胆嚢超音波検査画像
青矢印→胆嚢壁に沿って認められる低エコー構造物

 

■手術

腹部に5mmトロッカーを4カ所挿入し、炭酸ガスで気腹しました。鏡視下で胆嚢管を剥離し、クリッピング後に切離しました。
胆嚢は胆嚢底部漿膜剥離法を行い、胆囊破裂を起こさないよう慎重に剥離しました(図2)。万が一破裂した場合でも、専用の吸水送水管を用いて腹腔内洗浄が可能です。摘出した胆嚢の病理組織学検査では、胆嚢粘液嚢腫および胆嚢壊死と診断されました。

 

図2:胆嚢底部漿膜剥離を行っているところ
深部の術野を拡大し、手術することができる
胆嚢を摘出した後の肝臓の様子
胆嚢漿膜を残して摘出することで、肝臓の損傷を最小限にできる
術創の様子
胆嚢を体外へ摘出するために尾側の切開創を拡張している

 

■さいごに

現在よく行われている腹腔鏡を用いた手術・検査は、緊急性が低い予防的なものが中心です。即座には命に関わらない疾患に対して、飼い主様は動物にかかる疼痛・入院などの負担を減らしたいと考える方が多いように思います。
内視鏡外科手術は、そういった飼い主様のご希望に寄り添うことができる方法のひとつです。特に肥囊内の粘液腫は、病状悪化時に早期に肥嚢摘出術を行うことで低侵襲の手術が可能です。症例の診断・適応を含め検討いたしますので、まずはご紹介いただきますよう、お願いいたします。